気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「悪い。完全にセクハラだな」
「そんなこと……」
「今日、凜香を見て……素顔の凜香を知れば知るほど惹かれていくんだ。屋上庭園で凜香の声を聞いたときは、体が凜香を欲しがったけど、今は違う。心が凜香を求めてる。凜香も同じ気持ちを持ってくれたと思ったんだけど、それは俺の勘違いなのか?」

 透也の表情に、凜香の胸が苦しいくらい締めつけられる。凜香が今感じているのは、まさに彼と同じ。心でも体でも彼を求めている。でも。

 凜香は大きく深呼吸をして覚悟を決め、口を開いた。

「私の最後の秘密を教えてあげる……。そうしたらきっと透也くんは、私みたいな女を欲しいなんて思わなくなる」
「そんなことはない。俺は今日、凜香の素顔を見たんだ」

 透也が凜香を見た。

「違うわ」

 凜香は小さく喉を鳴らし、もう一度深呼吸してから話し始める。

「今日会ったお姉ちゃんの夫の康人さん……私、彼のことがずっと好きだったの」

 透也が何も言わないので、凜香は話を続ける。
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