スナップ写真
【待ち時間】
『待ち時間』
電車待ちのホームのベンチに座り、時刻表を見上げる。
そろそろ来る頃だ。
俺の後ろのホームに電車が止まる音が聞こえ、いくつかの足音が降りてくる。
聞き慣れたいつもの足音が近づいてきて、俺が座っているベンチのそばに立つ。
さも今気づいた風を装って顔を上げると、予想通りの彼女がいた。
お互いに軽く会釈を交わし、彼女は俺の隣に一人分ぐらいのスペースを空けて座り、ハンドバッグからブックカバーが掛けてある文庫本を取りだし、栞を挟んでいたページを開く。
いつもどおりの日課。
名前も知らない彼女と俺が、毎朝10分だけ共有する時間。
気づかれないようにそっと彼女の様子を窺う。
彼女はかなり読書好きらしく、読んでいる文庫本の厚さは毎回違う。
「ふふっ」
思わず笑みをこぼした彼女はハッと顔を上げ、俺と目が合った。
「……」
数秒の沈黙の後、彼女はちょっと恥ずかしそうに笑って肩をすくめて見せた。
Fin.
電車待ちのホームのベンチに座り、時刻表を見上げる。
そろそろ来る頃だ。
俺の後ろのホームに電車が止まる音が聞こえ、いくつかの足音が降りてくる。
聞き慣れたいつもの足音が近づいてきて、俺が座っているベンチのそばに立つ。
さも今気づいた風を装って顔を上げると、予想通りの彼女がいた。
お互いに軽く会釈を交わし、彼女は俺の隣に一人分ぐらいのスペースを空けて座り、ハンドバッグからブックカバーが掛けてある文庫本を取りだし、栞を挟んでいたページを開く。
いつもどおりの日課。
名前も知らない彼女と俺が、毎朝10分だけ共有する時間。
気づかれないようにそっと彼女の様子を窺う。
彼女はかなり読書好きらしく、読んでいる文庫本の厚さは毎回違う。
「ふふっ」
思わず笑みをこぼした彼女はハッと顔を上げ、俺と目が合った。
「……」
数秒の沈黙の後、彼女はちょっと恥ずかしそうに笑って肩をすくめて見せた。
Fin.