スナップ写真

【置き手紙】

『置き手紙』


もともと帰りが遅い仕事だ。残業が入れば午前1時や2時も珍しくない。

君はそんな時でも、いつも僕が帰るまで起きて待っていてくれた。

今の今までテーブルに頬杖をついてうつらうつらと舟をこいでいたのだろう。ほっぺに手の跡をしっかりとつけた君が「おかえりなさい」と微笑んでくれると、仕事の疲れもすっかり癒される気がした。


でも、君に申し訳ないから、今日は遅くなると分かった時点で「先に寝てて」と電話した。

君の「おかえりなさい」がないのは寂しいけど、やっぱり君に悪いから。


ひっそりと静まり返ったアパートのドアをそっと開け、電灯が点いたままのダイニングに入ると、君は待っていなかった。

一抹の寂しさを感じつつ、でも、これでいいんだと自分に言い聞かせ、何気なくテーブルの上を見てメッセージカードに気付く。

『おかえりなさい。今日もお仕事お疲れさま』


Fin.
< 6 / 8 >

この作品をシェア

pagetop