王子様、拾いました。
王子様とライバル
「はあっ……」
「真白、ため息今日4回目」
「だってぇ、長谷部くんと会えないんだもん~っ!」
足をジタバタする私に、朱音が冷たい目を向ける。
「会えないんだもん、って。そりゃそうでしょう」
「なんで!?」
「真白、この3年間で長谷部くんに会ったことってあった?」
「…………」
「大学に通って3年。真白ってば長谷部くんの存在すら知らなかったよね? それって会ったことなかったってことでしょ?」
「うん……」
「ってことは、連絡先も知らない、特に会う約束もしていないのに会えるわけないでしょうが」
もっともな朱音の意見に反論することもできず、私は今日5回目のため息を零した。
長谷部くんとオムライスランチをしてから2週間。
連絡先を聞きそびれた私は、今度会ったら連絡先を交換しようと決意を固めて、ヒマさえあれば広大なキャンパスを無駄に散歩したりしているのだけど。
その甲斐もなく、長谷部くんに一度も会えていないのだ。
「ねぇ、真白?」
「うーん?」
「真白はさ、長谷部くんともう一度会ってどうしたいの?」
「どうって……。また一緒にご飯食べたりとかしたいなあとか、あのオムライスの作り方を妹さんに教えてもらいたいなあとか思ったりしてるけど」
「それだけ?」
「……それだけだよ」
「ふーん」
「何、その興味なさそうな返事は」
「……いや、別に。自覚ないんだったら言う必要はないかと思って」
朱音の言葉に少しドキリ、としたけれど、彼女は気付いていなかったらしく。
そのまま別の話題に入ったことにホッとしつつ、私は中学生のように長谷部くんに会えるおまじないでもないだろうか、とちょっぴり真剣に考えていた。