王子様、拾いました。
こうして私は、構内を近年稀にみる猛スピードで駆け抜けているわけで。
ハァハァ、と息を切らせてたどり着いた、拾得物管理室でサインをし。
対応してくれた職員さんにお礼を言って、今来た道をまたまた猛ダッシュで駆け抜けて行く。
よしよし、これでバイトには遅れずに行けるはず……。
あれ!?
さっき、有り得ないものを瞳に映してしまった気がして、思わず急ブレーキ。
さっききた道を少しだけ戻っていく。
今見たのは幻?
そう思いながら何度か瞬きをするけれど、どうやら今私が見たものは、幻ではないらしい。
「なぜ、こんなところに人が……?」
なぜか、大学の廊下に倒れている人。
恐らく、男性。
だ、大丈夫かな、この人。
「あの~……」
少しだけ離れた場所から小さな声で呼びかけてみるけれど、一向に動く気配が見られない。
どうしよう。
正直、この人に構っている時間はないのに。
でも、もし、私がこのまま野放しにしていて、この人の生命の危機! なんてことになったら。
……私、眠れなくなる!!