王子様、拾いました。
「……なんだよ、すっかり仲良しなんだな」
「何? ヤキモチ?」
「バ、バカ言うなよ! そんなんじゃ……」
「ウソウソ。わかってるよ」
少しだけ顔を赤くして怒るクロの肩をポン、と叩いて笑うと、クロは再び口を尖らせた。
藍ちゃんを助けたあの日以来、私は長谷部兄妹と会うことも多くなった。
藍ちゃんが私の分のお弁当も作ってきてくれて、3人でランチをするくらいのことだけど、私にとってはとても貴重な時間。
残念ながら私の勇気が出なくて、長谷部くんに直接連絡して約束するっていうことがまだ出来ないけれど。
でも、今は。
藍ちゃんもいる3人でもいいから、会えることが幸せだったり、する……。
「でもさぁ、長谷部の妹って、ちょっとだけ雰囲気似てないよなあ」
「そうだね。そういえばそうかも」
髪の毛の質や色とか違うしなあ。
クロの言葉に、ふたりの顔を思い浮かべる。
「長谷部ってどっちかっていうとオーラが柔らかいじゃん」
「うんうん」
「でも、妹ってちょっとだけクールな空気感ない?」
「えっ!? むしろ藍ちゃんのほうが、長谷部くんの上をいくほんわかオーラだよ?」
私の反論に、クロが歩みをピタリ、と止める。
「真白。長谷部の妹って背ぇ、高い?」
「いや、私よりも低いよ。っていうか小柄で可愛い」
「髪の毛、ショートカットでキリっとした感じじゃなくて?」
「……ストレートのミディアム」
明らかにクロの言っている女の子像が藍ちゃんと異なっていて。
困惑の顔を浮かべるクロ、と私。
「オレ、長谷部とふたりで歩いているの見かけたことあるんだよ。そのショートカットの美人と」
「そ、そう……」
「だからてっきりかぐや姫って、その子のことだと思ってたけど。でも、真白の話聞くと、絶対長谷部の妹がかぐや姫じゃん」
「うん。だからそうだって言ってるじゃない」
「じゃあ、オレの見たのは誰なんだよ」
クロがつぶやいたのと。
「真白ちゃん!」
後ろから涼やかな可愛い声が聞こえてきたのは同時だった。