王子様、拾いました。


***




長谷部兄妹から連絡が入らなくなって2週間。

私は大学の近くのカフェで、朱音を待っていた。




長谷部くんからの連絡は、あの日の1件しかないけれど。

藍ちゃんとは時々メールをしていたのに、私が送っても返事が来ない。

何か、メールが出来ない状況なのかな? と若干心配になっていて。

だけど、そういう時に限って、構内で長谷部くんに出会うこともなく。

朱音を待ちながら、どうすれば近況がわかるのかなあ、とぼんやり外を眺めていた。

その時。




窓の向こうに映ったのは、美空さんだった。

向こうも私に気付いたらしく、驚いた表情を浮かべている。

そして、隣を歩いていた男性と何やら会話を交わし、カフェへとやってきた。




「美空さん、ちょうどよかった。私、聞きたいことがあって……」

「ねぇ、なんで藍をひとりにしたのっ!?」

私の質問を遮るように、美空さんが言葉を紡ぐ。

「え?」

「何でこの間、藍を電車の中でひとりにしたのかって聞いているの」

冷静な口調の中に、ものすごい怒りを感じる。

だけど私には、なぜこんなに美空さんが怒っているのかがわからなくて、困惑するばかり。




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