王子様、拾いました。
オロオロする私を救ってくれたのは、美空さんと一緒にいた男性だった。
「千裕、落ち着け」
「秀一、だって、この人藍をっ……!」
「事情を知らない人からしたら、長谷部をひとりにしたらいけないなんてわかるわけないだろ」
「あの、藍ちゃんをひとりにしたらいけないって……どういうことですか?」
困惑を浮かべる私に、男性は微笑んだ。
「とりあえず、ここ座ってもいいかな?」
「は、はい」
「ほら、千裕も座って」
男性に促されて、私の前に美空さんが座る。
キレイな顔は少しだけ頬を膨らませていて。
拗ねたようなその表情は、いつもより幼い感じに見えた。
「自己紹介が遅れてしまったね。海野秀一(うみの しゅういち)と言います」
斜め前に座った海野さんは、落ち着いた様子で店員さんに飲み物をオーダーしている。
「S女子大付属高校で教師をしていてね。この千裕と長谷部は元教え子」
あ、それと。
「突っ込まれる前に言っておくと、千裕と俺は付き合ってる」
「しゅ、秀一! 別にそれ今言わなくてもいいじゃないの」
「いや、きっとこの子も気になるかなあって思って」
いつも大人びて見える美空さんが、顔を真っ赤にして怒ってる。