王子様、拾いました。
「教えてください。藍ちゃんをひとりにしちゃいけない理由って何ですか? 電車の中で何が起こって、藍ちゃんが体調を崩しちゃうことになったんですか?」
私の問いかけに、海野さんは首を横に振った。
「プライベートなことだからね、本人の了承なしには俺の口からは告げられない。でもね、宇高さん」
私をまっすぐに見つめる、『先生』の瞳と目が合う。
「俺は、千裕に君の話を聞いた時から、君があのふたりの心を溶かしてくれるんじゃないかと思ってる。だから、もしあのふたりが真実を告げてくれた時、ふたりを助けてほしいんだ」
ふたり?
藍ちゃんだけじゃなくて?
「蒼くんと藍、ふたりのことよ」
私の心を読み取ったかのように、美空さんがつぶやいた。
「……さっきはごめんなさい。急に怒鳴っちゃって」
「ううん。藍ちゃんが入院しちゃったんだもん。怒るのは当然だよ。こっちこそごめんなさい」
「そんな。宇高さんは悪くないわよ。悪いのは私のほう」
「でもっ……!」
「はい、そこまで」
このままだと延々続くと踏んだのだろう。
海野さんの手でストップが掛けられた。
勢いを止められた私たちは、思わず顔を見合わせて笑ってしまう。
それは、
「真白お待たせ~、ってどうしたの、そんなに笑って」
待ち合わせにやってきた、朱音に声を掛けられるまで続いたのだった。