王子様、拾いました。
パタン。
柳澤教授の研究室のドアが閉まり、ふたりっきりになる。
最初に声を発したのは藍ちゃんだった。
「真白ちゃん、ごめんね。私が連絡出来なくて、心配してくれてたってちぃちゃんから聞いた」
「ううん、いいの。藍ちゃんが元気なら。でも、入院したって聞いたから……」
何があったの?
そう問いかけそうになって、思わず口を閉じる。
「ねぇ、真白ちゃん?」
「何?」
「もしかしたら、この話を聞いて真白ちゃん、とっても嫌な思いをするかも知れない。話すことも、私の自己満足にしかならないかも知れない。でも……聞いてくれる?」
藍ちゃんの真剣な瞳に、私も大きくうなずく。
「知りたい。藍ちゃんに何があって、そんな苦しい出来事に遭わないといけないのか」
「……ありがとう、真白ちゃん」
そして藍ちゃんから聞いたのは。
とてもとても、悲しい出来事だった――