王子様、拾いました。
「中学校2年生の冬のことなんだけど。
私と蒼くん、塾から家に帰ってたのね。
そうしたら、たまたま陽向くんに会って。
陽向くん、星を見に行くところで。
蒼くんも、「行きたい」って言って。
だから私、そこからひとりで家に向かってたの。
でも、もう少しで家に着くっていう時に、1台の車が横に停まって。
……車の中に、引きずり込まれそうになったの。
運よくそこに大人の人が通りかかって助けてくれたから、被害はなかったんだけど。
でも、それから男の人が怖くなって。
ひとりで外を歩くのも怖くなって。
高校も、最初は蒼くんと同じ高校に進むつもりだったんだけど、男の人が怖いから、女子高に進路変更して。
出掛けるのもひとりで行けなくなっちゃって。
いつも両親か、蒼くん。ちぃちゃんが付き添ってくれるようになったの。
この間も、電車の中でひとりになったら、急に怖くなってきちゃって。
息が苦しくなって、電車の中で倒れちゃった」
藍ちゃんの告白に、言葉が出なかった。
いつもニコニコ笑ってて、何でもできて可愛い藍ちゃん。
私にはないものをたくさん持ってて、憧れの女の子。
まさか、こんな悲しい体験をしていたなんて。