王子様、拾いました。



「ごめんね、何にも知らなくて。知ってたら私、電車に藍ちゃんをひとりになんてしなかったのに……!」

「真白ちゃん、謝らないで。私、真白ちゃんに謝ってほしくて話したわけじゃないから」

私の両手を握りしめた藍ちゃんが、言葉を続ける。

「私、今まで甘えていたんだと思う。両親や蒼くん、ちぃちゃんが近くにいてくれるから。でも、それじゃダメだって思ったの。真白ちゃんに出会えたから」

「え!?」

思わず声が出る。

「私、何かした……?」

「ん~、何かしたっていうか、蒼くんを拾った?」

長谷部くんを、拾った??



ますます頭の中でハテナマークを広げる私の前で、にこやかに微笑む藍ちゃん。

「真白ちゃんが蒼くんを助けてくれてからね、なんだか蒼くん楽しそうなの」

「そ、そう……?」

「うん。蒼くん、私があの事件に遭ってから責任感じてて。恋愛とか、そういうのまったく関心を持ってなくて、ていうか持たないようにしていたんだと思う」




それを聞いて思い出すのが、この間の図書館での会話。

「彼女は作らないよ」

出来ないではなくて、作らないと言っていた長谷部くん。

でも、それは……

「それは、美空さんに彼氏がいるからじゃなくて?」

「ちぃちゃん? ちぃちゃんと蒼くんの間に恋愛感情が生まれたことなんて、一度もないと思うよ」

「…………」

「真白ちゃん。もしかして蒼くんはちぃちゃんを好きだと思っていたとか?」

「そうじゃないの?」

「ないない。人間としてお互い好きだとは思うけど」

一刀両断。私の意見をバッサリ断ち切った藍ちゃん。




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