王子様、拾いました。
「蒼くんさ、妹の私から見てもいい男だと思うの。顔も結構かっこいいし、頭もいいし、優しいし」
「王子様、って呼ばれてるくらいだしね」
「ふふっ。そうだね。でもね、いくら告白されても付き合ったりしなかったの。私に遠慮して」
藍ちゃんの話を聞いていると、長谷部くんの今までの行動がすべて合点がいく。
藍ちゃんのお出掛けについていくのも、予定を聞いて合わせていたのも、すべて自分があの時一緒に帰らなかったからだっていう強い責任感から。
男性恐怖症になってしまった妹がいるのに、自分だけが恋愛なんてしてちゃいけないんだって、そう思っているから、どれだけ女の子に騒がれても動じなかったんだ。
「だけど、蒼くんに、真白ちゃんのことだけは諦めてほしくないんだ、私」
「ほぇ?」
衝撃の発言に、思わず声が裏返る。
「真白ちゃん、蒼くんの事好きでしょ?」
言い当てられて、返事も出来ない。
顔が真っ赤になったのが、イエスの印。
私のわかりやすい表情を見て、藍ちゃんが微笑む。
「私はね、蒼くんの事も、真白ちゃんの事も大好き。だから、ふたりに幸せになってほしいの」
「藍ちゃん……」
「でも、その為には私がちゃんとしなくちゃって。少しずつでもいいから、ひとりで外出できるように頑張っていかなきゃって思って」
「私、頑張るから。すぐには無理だと思うけど、頑張るから」
満面の笑顔を私に向けた藍ちゃん。
すると、その顔が少しだけ意地の悪い笑顔に変わった。
「だから、蒼くんも素直になって!」