王子様、拾いました。
勢いよく後ろを振り向くと。
「長谷部くん……!?」
少しだけ頬を赤く染めた長谷部くんが、立ち尽くしていた。
「い、いつからそこに」
「私が事件の事話し始めたころからだよね?」
それって、かなり最初の頃からじゃないですかっ!?
ってことは。
私が美空さんとの関係を盛大に勘違いしてたことも。
長谷部くんが好きって事実も、ばれてる~っ!?
慌てふためく私をよそに、藍ちゃんは冷静だ。
「陽向くんにお願いして、蒼くんに話を聞いてもらえるようにしてたから」
「……それで陽向くん、僕に静かに扉開けろって言ったのか」
前髪をくしゃっと触って苦笑いの長谷部くんに、藍ちゃんが向き直る。
「蒼くん、私の気持ちはさっき聞いてたでしょ? 蒼くんがあの事件の事、責任感じることじゃないんだよ。あれは誰のせいで起こったわけでもない。なのに、私が中々立ち直れないせいで、蒼くんに迷惑ばかりかけて、本当にごめんなさい」
「何言ってるんだよ。藍ちゃんが僕に謝ることなんてひとつもない」
「ありがとう、蒼くん」
「藍ちゃんの気持ちはわかった。でも、無理はしちゃダメだよ。ゆっくりでいいから、直していこう」
「うん」
ふたりを見ていると、本当にいい兄妹だなあって思う。
お互いがお互いのことを思いやっていて。
だから、こんな優しい気持ちでいられるんだ。
だから、周りの人たちにも、優しい気持ちを分けることが出来るんだ、って。