王子様、拾いました。



口に入るだけパンを詰め込む姿に、思わず笑いがこぼれてしまう。

この人、一体どれだけご飯食べてなかったの。

ゴクゴク、と野菜ジュースを飲みほして、彼が大きく息を吐く。

「動けそうですか?」

「はい、ありがとうございます。ごちそうさまでした」

少し血の気が戻ったようにも見える彼の顔にほっとする。

あーあ。バイトは完全に遅刻だな。

でも、この人の役に少しでも立ったのなら、それはそれでいっか。

そう自分に言い聞かせて、腰を上げる。

「これからは倒れない程度に頑張ってくださいね。それじゃあ」




「……あ、ちょっと待って」

「え!?」

彼の言葉に振り向くと、左手を顎にあて、何かを考える仕草をしていた。

考えること数秒。

彼は一言、言ったのだった。




「好きな食べ物は、何ですか?」




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