王子様、拾いました。
「宇高さん」
俯いていると、上から優しい声が降ってきた。
「ありがとう。さっきの言葉、すごく嬉しかった」
顔を上げると、優しい笑顔が見える。
「初めて廊下で会った時、こんな見ず知らずの僕にこんなに親切にしてくれるなんて、すごいいい子だなって思ったんだ。もう一度会いたいって思って、お礼を口実に約束を取り付けた」
「う、嘘」
「嘘じゃないよ。でも、藍ちゃんが恋愛出来ないのに、僕が恋をするなんていけない。そう思って自分の気持ちに蓋をしようとしていたんだ」
照れくさそうに、でも私の瞳を真っ直ぐ見つめて気持ちを伝える姿に、嘘はないと心から思える。
「前、ショッピングモールで会ったでしょ? あの時、すっごく悔しかったんだよ。なんであの男は宇高さんとふたりっきりで出掛けてるんだ、ってね」
「その時の表情を見て、私思ったんだぁ。蒼くんは真白ちゃんに恋してるんじゃないのかなって」
双子の勘ってヤツ?
ニコニコ笑う藍ちゃんに、長谷部くんはバツの悪そうな顔で苦笑いしてる。
「宇高さん」
「はい」
「僕も、宇高さんの事が好きです。でも僕、宇宙バカだし、女の子の気持ちとか全然わかんないから、君の事も傷つけちゃうこともあるかも知れない。そんな僕でもよかったら……、付き合ってくれますか?」
どうしよう。
嬉しすぎて言葉が出ない。
ただひたすら、うんうんと頷くだけしかできない私の頭を、長谷部くんがクシャっと撫でてくれる。
「真白ちゃん、よかったね」
そう言って、藍ちゃんが私の腕に抱きついてきてくれる。
「僕にも、君の事守らせてね。……真白ちゃん」
「う、うわああああん」
まるで子どものように泣きじゃくる私を、ふたりはただそっと、温かく見つめていてくれた。