王子様、拾いました。
廊下で出会った人にパンとジュースをあげた翌日。
私は、彼との約束の為、食堂へと足を運んでいた。
「好きな食べ物は、何ですか?」
昨日、彼から尋ねられた時、すぐに言葉が出てこなくて。
黙ってしまった私に気付いた彼は、少し苦笑した。
「僕が言葉足らずでしたね。ごめんなさい」
「いや、別に……」
「今日のお礼をしたいんです。食べ物を頂いたので、僕も何か食べ物でお返しが出来ればと思ったのですが……」
ご迷惑でしたか? と眼鏡の奥で寂しそうな瞳が揺れる。
その瞳がとてもキレイで。
内心、この人ちゃんとすれば、かっこいいんじゃないかって思っていた。
だから。
「オムライスです。私、オムライスが大好きで」
もう一度、会いたいと思った。
「わかりました。オムライスですね。では、早速ですが、明日のお昼は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
こうして、昼に食堂で待ち合わせをすることになったのだった。
「あー、真白じゃん」
「よっ」
連れだって歩いてきたふたりに、手を軽く挙げて応える。
彼らの名前はクロとシロ。
……決して私が冗談を言っているわけではなく、れっきとした彼らのあだ名だ。
本名は、黒岩くんと、白井くん。
よくいえば素直、でもとってもバカ正直なのがクロで。
毒舌で腹黒なのがシロ。
正反対のように見えるふたりだけど、高校時代からの仲良しらしく。
「あれ、みんな集まってる~」
「おー、朱音じゃん。久しぶり」
入学式で仲良くなった朱音を含めたこの4人で、よくつるんでいる。