王子様、拾いました。
「な、何っ!?」
4人で歓声の上がった入口を見つめると、ちょうどひとりの男の子が食堂に入ってきたところだった。
「あ、王子じゃん」
「朱音、知り合い?」
「っていうか真白知らないの? 王子の事」
首を傾げる私に、眼を丸くする朱音。
「長谷部蒼(はせべ あお)。理学部の3回生だろ」
横からシロが淡々と彼の名前を告げた。
「そ。昔から柳澤教授と一緒に宇宙の研究とかしてて。優秀な上にあのルックスでしょ? ついたあだ名が『星の王子様』」
「星の王子様?」
「宇宙ってことは星にも詳しいじゃん、っていう単純な理由よ」
「つーか真白ってホントぼーっとしてんだな。長谷部の事知らないヤツなんて、この大学にいないと思ってたけど」
シロの言葉に大きくうなずく朱音。
「ちげーよ。真白はぼーっとしてんじゃなくて、男を顔で判断しないいいヤツなんだよ!」
「……クロ。それは私が男を顔でしか判断しない悪いヤツっていいたいわけ?」
「ごめん、朱音。そういうつもりじゃ……!」
朱音に攻められるクロを横目に、今一度王子のいる方向を見つめる。
どうやら王子は誰かを探しているらしく、辺りをキョロキョロと見回していた。
パチン。
あ、ヤバイ。
王子と目が合ってしまった。
ジロジロ見られていたら嫌な気分だろうなと思った私は、咄嗟に王子から目を逸らした。