王子様、拾いました。
「ん? なあ、長谷部、こっちに向かって来てない?」
「うん、そんな気がする……」
私とシロのつぶやきに、朱音とクロが言い争いを止めた。
スタスタ。
王子は一直線に私たちのいるテーブルへと歩いてくる。
「シロ、あんた王子にケンカ売った?」
「……俺は平和主義者だ。基本的には自分からケンカは売らねぇよ。売るとしたらクロだろ」
「いやいや。オレ、アイツと接点なんかねぇし。話したことだって……」
「こんにちは」
王子は私の目の前で立ち止まった。
「へ!?」
きょとんとする私たちに気付いていないのか、王子はふんわり微笑んでいる。
「昨日は助けてくれてありがとうございました」
「昨日……?」
改めて、昨日助けた人の姿を思い返す。
今日はキレイにまとまっている髪の毛だけど、確かに少し茶色がかった色は一緒。
ヒゲはなく、さっぱりしているけど、肌は白くてキレイだった。
そして、黒縁メガネの瞳の奥……。
「同じだ……」
「思い出してもらえましたか?」
昨日の彼と、目の前の王子が一致した―――