惹かれる心と放つ想い
ジメジメした雰囲気は弓道場にも満ち、湿気で木の床が気持ち悪い感触に満たされていた。

射場の雨戸を開ける。

湿った空気に雨の音も加わった。


「おやおや!!
やっぱり来てくれたんだね!!」


そういいながら袴姿の先輩が姿を表した。
制服姿とはうってかわってキリッとした雰囲気。
ボブヘアーの髪もポニーテールにしていた。


「ははは、あそこまで言われて引き下がるのは許されないかなって
あ、そうだ的付けちゃいますね、どこ付けますか?」

「ふふふ、男の子だねぇ~
それじゃ"中"(射場と的場の真ん中の位置)に一個
よろしくね!」


ジャージには似合わないローファーを履き、的を持ち傘をさし的を付ける。

電気を付けたからなのか…
弓道場にモヤモヤした雰囲気はもうすでに無くなっているように感じた。



弓道場に戻ると先輩は待ってましたと言わんばかりに"ゆがけ"(弦を引くための手袋状の道具)に"ギリ粉"(簡潔に言えば滑り止め)をつけ四本の矢を持ち射場に立った。


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