惹かれる心と放つ想い
相も変わらず様になる。



正座して瞼を閉じる、あの時と同じように。

前回よりも知識はついている、今度は吸収できるそう思った。

瞼を開けた先輩は雰囲気が変わり一連の動作に入る。

会…


静寂が襲う。



カンッ!!


ザッ!!




「あれ?」




「うわっちゃーーーーー
ダメダメだ~!!」


矢は矢道に落ちた。

離れの状態でそう大声でいうと
グダグダのまま4射が終った。


「渚先輩!?
体の調子悪いんすか?」

「え?あぁいやいや、別にそんな事はないんだけどねぇ」

「でも先輩が残念なんて」

「晴君は私をロボットなんかだと思ってるのかね!!」

「いや!!そういうわけでは」

「はははは、やっぱり面白い
ん~素直に言うと私弓道にはあんまり向かないんだよね」

笑いながらそう先輩は言った。

「え、どうして」

「実は私感情で打ち方変わっちゃうんだ
なんというか今日一段と雨強くて湿度も高いでしょ?
そうすると引く時の静かさで色々顔を出すんだよね」

「顔を出す?」

「そう、憂鬱だなぁとか明日も降るのかなぁとか色々、負の感情がね
そうするといつも通りやってるつもりでも力が抜けちゃってて、いざ打つと矢に表れちゃうんだ」


意外な弱点だった。
先輩が言うには逆のパターンもあるらしい、緊張で上がりすぎると矢が上に飛んだり混乱していると矢が左右に飛ぶ。

「お恥ずかしい限りで…
うーんと例えば弓道で向いてるっていうのは山岸さんみたいなタイプ
見たことあるでしょ?」

確かにあの人の一射は怖いほど空気が止まり、山岸先輩の打つ矢は真っ直ぐに正確に飛んでいた。


「ほい」


そう言いながら渚先輩は記録表を手渡した。





「あ、本当だ」




山岸先輩の記録は
ブレが少なく、2中~皆中を安定して取っていた。




しかし渚先輩の記録は4月後半までは良かったものの5月中旬にかけては残念のほうが多いという結果が記されていた。

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