惹かれる心と放つ想い
第一章【一歩後退】
桜がほとんど見えなくなってきた五月。

「山岸先輩おはようございます!!」

俺はというと

「おっすー、今日も頑張ってこーぜ」

弓道場に居た。


この学校の弓道部は小さく、更衣室は野球部の数部屋ある部室の二室を借りてる状態。


弓道場も"巻き藁"(実際に弓と矢を用いて引く一連の動作を確認する為の道具)を置く位置が無いので外に置いて、一個だけ室内にあるといった状態。


もっぱら室内で"ゴム弓"(棒にゴムを付けた道具で弓を使わず弓を引く一連の動作を確認する。)を引く日々。


先輩も巻き藁を使いたいが、順番待ちなんて時間の無駄だからゴム弓のゴムを何周かさせ、負荷を加えて練習している。


入りたての俺がやる仕事は

"的貼り"(安土という斜めに整備された土に的を付ける作業)

筋トレ

"矢取りと看的"(射った矢を回収と何本的に刺さっているかの確認)

"矢拭き"(回収した矢の先端についた土を拭く作業)

"記録"(黒板やホワイトボードに矢取りから言われた的に刺さった本数を記入する係り)

ゴム弓引き

教本読み

"安土整備"(穴の空いた安土をコテで埋めて平らにする作業)
これを一日に流れ作業のようにやることだ。



先輩は全員で5人。

三年3人
男は 3-B〔山岸悟先輩〕と 3-D〔木本文明先輩〕
女は 3-D〔立川綾先輩〕
二年2人
女のみで 2-A〔岩田加純先輩〕と 2-B〔高橋渚先輩〕

新入部者は6人といったところ。

先輩が言うには、これから半数にはなるよ。
っと怖いことを聞いたが俺は含まれないことを努力しよう。

山岸先輩は特に1年の練習によく付き合ってくれた。

「さてっと、ゴム弓みてやっから引いてみ」

「はい」

そう言われあることを思い出しながら引く。

「あー、もっと平行になるように意識して、右肘から左人差し指先端の間に水の入ったコップを意識するんだ
溢さないくらい、平行に」

「えっと…こう」

「力みすぎ、肩上がってる」

「はい!」

「よし、"離れ"(矢を放つ動作)」


バチン!!!!!!

「痛ったああああああああああ!!!!!!」

「あははははは、顔向けが浅いな、ゴムの方に気をとられてるからだぞ
あと"会"(離れの前動作、弓を引いた状態)は良かったが離れる瞬間に力んで力任せに放ってる
青アザできる前に直すんだな」

「はい…」


奥深く痛い弓道生活が高校生活に加わった。

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