SECOND プリキス!!
俺のミューズ!
とある日のこと。
授業が終わり、それぞれの放課後が訪れようとしていた時だった。
窓側の席の子が、「まぁ」と驚いた声を出したのだ。
「皆さん、ご覧になって。」
「何ですの?」
「門の前に、他校の女性が立っていますの。珍しいわ。」
そう言うと、他の生徒たちも皆窓辺に集まる。
カナ女は御令嬢だらけの閉鎖的な空間。
他校生の姿が見えるだけで結構な騒ぎになるのだ。
「あら、あれは……北聖?」
「北聖って言いますと…………天音お姉様の弟君が連盟総長を務めてらっしゃるのですわよね。」
「ええっ?!あの北原天真様が、天音お姉様の弟君でしたの?!」
「姉弟揃って美しくて、優秀であられるのね……。」
松竹さん派の女子達は、例えるなら自ら敵陣に突っこんでいくような肉食系女子だ。
イケメンがいたなら一直線。
もう一度言う。イケメンがいたなら一直線だ。
一方、その他の女子達は───“純潔”といったようで。
世間知らずのお嬢様だけれども、決して男性(特にイケメン)に興味が無い訳ではない。
けれども蝶よ花よと育てられた淑やかな彼女達は、自ら男性にアタックするのをはしたないと嫌うけれど、そう、興味が無い訳ではないのだ。
だから割と出て来るよねー……
イケメンの代名詞、四校総長の名前は。
あとお兄ちゃんも認知度は高いみたい。
四校総長の名前が出てくる度に私は、「そいつらはそんなイケメンな性格はしていない!」と叫びたくなる。
ちなみに一番叫びたくなった時は「西巴様は捨て犬を助けていそうですわ」の時だ。
「あら、烏丸さん、今日はもうお帰りに?」
「ええ、それではみなさん、ご機嫌よう。」
例の他校生の事はすっかり忘れた様子で、女子トークに花を咲かせるお嬢様達に挨拶をすれば、ご機嫌ようと大合唱が返ってくる。
淑やかに挨拶をしたつもりだったが、私はその時内心少しだけ焦っていたんだ。
なんとなくチラリと見えた他校生。
あれ……?気の所為じゃなければ見覚えのある後ろ姿じゃないか?と。
「烏丸さん。ほなね。」
「兵藤さん、ご機嫌よう。」
帰り際、いち早く玄関で靴を履いていた兵藤さんに会って、挨拶を交わした。
私達はそんな関係だ。
一匹狼な兵藤さんと、群れている私。
あまり接点はないけれど、兵藤さんとはもっと話してみたいんだよね……。