SECOND プリキス!!

ロンドンです。





ゴー……という大きな音で目が覚めた。

その音が掃除機の音に聞こえた私は、「お兄ちゃんが掃除してくれてるのかなぁ」なんてぼんやり考えていたんだけど。

「あ、起きました?」

「お、お、おはよう……ございます。」


顔を覗き込む二つの顔。

…………完全に覚醒した。


一人は天真先輩。

いつも通りの爽やかスマイルを浮かべ、ふわっふわした雰囲気を醸し出してる。

もう一人はさっきまで、いつもとはすっかり変貌して……かと思えば超重大発言をあっさりした灰音。

灰音は天真先輩とは真逆───

私とは目を合わせようともせず、「ひぃっ……起きた……」と私は謎に怖がられてる。


「……っていうか此処どこ……」


怖がる灰音の向こう側に、何やら見覚えのないお洒落なキッチンスペースやら、リビングのようなものが広がっているのが見えた。

本当に見覚えがないから、違う場所にあるにまで来たんだろうか。

そもそも変だ。

なんだかお腹に違和感を感じるような……

思わずおへその辺りを触れば、謎の質感のベルトなようなものがある事に気がついた。


「これって、」

「シートベルトですね。」


そう。

それは紛れもなく、シートベルト。

車でするような斜め掛けのではなく、飛行機とかでよく見るお腹周りにするやつ。

よくよく自分が置かれている状況を顧みよう。

───北校生に、座り心地のいい椅子に座らされてシートベルトを付けられてる。

これをエマージェンシーと言わずして何をエマージェンシーと言うだろう。

そもそも何でシートベルト?




────まさか。




「まさか先輩、恵に影響を受けたんですか?!」


ヤンデレ恵を見て、憧れて真似しちゃったのか?という話だよね。

先日、シートベルトとは違うもので捕縛されたばかりである身としては、ヤンデレが増える事が一番遠慮願いたい事である。

先輩は、「えー?」とかほんわかほわほわしてて否定も肯定もしないしね!もう!



「ヤンデレは現実ではモテませんよ!先輩はそのままで十分でしょう!そんな事しなくても十分モテキャラですから!」

「いやぁ、必死ですねぇ。」

「ヤンデレ増殖全力阻止、ダメ絶対。」

私の永遠のスローガンである。







必死の私が面白いのか、にまにましてる爽やか先輩。


「私、薄々気づいてたんですけど、君って面白いですよね。」

「はっ?」


うーんと、値踏みするように唸って変な事を言い始めた。



「君といたら退屈しないって事ですよ。」

「いや気のせいです。冬眠したくなるレベルに退屈しますよ。」

「ふふっ……そういう所が面白いって事です。」



……別に、受けは狙ってないんだけどなぁ。

何故か、天真先輩には発言の度に笑われてる気がしてならない。



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