SECOND プリキス!!
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降り立ったのは、ロンドン市内の空港……ではなく、芸能人御用達らしい、プライベートジェットやヘリを離着陸させる専用の広大な更地だった。
つい数時間前まで学校にいて、普通に日本語に囲まれていた身なのに、今ではブリティシュイングリッシュに囲まれてる次第とか、何事これ。
「初伊の二週間を俺に頂戴……?」
ひとしきり叫んだ後、突然の誘拐まがいのロンドン行きの理由を聞かない訳には行かないから、勇気を出して灰音に聞こうとした。
だって、あまりにも急だ。
放課後灰音に会って、灰音の秘密を知って、気がついたらロシア上空。
私が生きてきた中で濃密だなぁと思ったランキングベストテンには入ると思う、確実にね。
お姉ちゃんだってお兄ちゃんだってきっと、いつまで経っても帰らない私をかなり心配してると思う。
ちょっと美琴の家に行った時だって、目を疑う着信履歴を残した伝説がある兄と、隠飛羽の生徒の最高権力者の姉。
恐らく今も仕込まれているGPSがロンドンを指してたら、過保護な2人の事だ。我が兄姉ながら正直何をするか分からない。
とりあえず状況を知って、2人に連絡をしなきゃいけないし、出席日数だって心配だ。出来る事ならUターンして欲しいなぁと思っていた。数秒前までは。
だけどフワフワヘアーの超絶美少女が涙目で私を見上げてくるものだから……。
「喜んで。」
秒で、落ちたよね。
ピロリロリン、という音でハッとした。
見れば、スマホを片手に微笑む先輩。
これは……これは私、かなり迂闊だった?
そうは思うけど、後の祭り。
「喜んで、頂きました。良かったですね、灰音。初伊が単じゅ……ちょろくて。」
「脱、誘拐犯!ありがとう初伊!」
私の“喜んで”はがっつり録音されていた。
そしてよく見たら、灰音はにっこり笑ってたから、よくよく考えたら彼、嘘泣きかもしれなかったよね。
加えて先輩、ちょろいって言い直したけど、余計悪くなってるしね!
脳裏にふと浮かんだのは、橘の渋い顔。
“北校総長は、四校一の下種”だと、彼は確かにそう言った。
笑顔が驚異的に似合う天真先輩と、超絶美女だけど男気のある灰音。
一見二人とも無害に見えるけれどやっぱり、西校副総長にあれだけ言わせるだけあるんじゃないかな。
機嫌のいい2人を見て、大きく溜息をつく。
……腹を括って、ロンドンに行こうか。
「……マイシスターとブラザーの説得は、丸投げするからね?」
この後、私がロンドンに連れて来られた理由を聞いて倒れそうになったし、案の定お兄ちゃんとお姉ちゃんから連絡が目を疑うほど入っていたし、めちゃくちゃ二人が怒られたんだけれど、色々ありつつも私のロンドン2週間の旅はスタートしたんだ。