SECOND プリキス!!
「え……」
「何ですの、あの言葉遣い……」
ああ、やっぱり。
お嬢様達にはあまり馴染みのない、気取らない言葉。更には関西弁だ。
私は萌えると思ったが、お嬢様達には受け入れられなかったらしい。
ざわめきが広がり、先生が焦って「お静かに」と言うが、誰もいう事を聞かない。
「ねぇ、烏丸さん。野蛮だと思いませんこと?」
「…………。」
前の席にいる子に、同意を求められたが私は何も答えなかった─────。
「何で隠すん?」
実は普通に話す事を黙っておいてほしいと兵藤さんに頼めば、返ってきたのはその言葉。
非難しているようにも聞こえるが、そうではなく単純に好奇心から聞いているようだった。
「……この学校じゃ、皆こうだから。そうしないと此処の人達とは親しくなれないし、それは烏丸の為にならないから……かな。」
烏丸の為だとか、そんな裏事情。
初対面の人に話すことではないけれど、なんだか口が軽くなってしまったようだった。
多分、兵藤さんのまっすぐな瞳に嘘はつけなかったからだと思う。
答えれば、兵藤さんは「ふーん、なるほどな」と呟いた。
そのあとにっこり笑って、「なぁ」と言う。
「これは……あくまでうち理論で、烏丸さんには烏丸さんの考えがあるやろうから、聞き流してええから。」
「うちは此処に、兵藤を支えていく為に必要な事を学びにきた。だから学業優先。友人も、少しは出来ればいいなとは思う。」
「うちは本当の友人が少し出来ればそれでええ。だって、此処にいるオジョーサマ達は皆それぞれの家があって、それの為に生きていくんやろ。だからいざとなった時に、上辺だけの付き合いやったら助けてくれないと思うし、うちも助けないと思う。
だからうちは、兵藤佳蓮を隠さずに行こうと思ってるんや。ま、人は人、うちはうちやけどな。」
─────……
───……
兵藤さんの話には、納得させられた。
だからといって私はそれを聞いて、言葉を直そうとは思わないけど。
今まで培ってきたからね。
けれど、けれどね。
兵藤さんは、今まで此処で私が見てきた人間にはいないタイプの子だと思った。
自分の考えをしっかり持っていて、強い目的がある。
私……この子、凄く好きかも。
「烏丸さん、どうかしまして?」
黙りっぱなしの私を見て、野蛮だと言った子はオロオロとした。
きっといつもの私なら適当に微笑んで、回避していただろうから。
私は立ち上がる。
何が始まるのかと、クラス中の視線が集まる。
「兵藤さん。」
「何や。」
兵藤さんはやはり落ち着いていた。
落ち着かない空気の教室。
最も注目を集める二人が一番落ち着いているとか、何だか不思議な感じだよね。
私はスカートの裾を摘み、可憐にお辞儀をする。
角度はバッチリ。どこから見ても模範のお嬢様のお辞儀だろう。
そしてにっこり微笑んで言うのだ。
「歓迎いたします。聖カナン女学院にようこそ。」
「おおきに。」
それには兵藤さんも、スカートを摘み挨拶返しをしてくれた。
ざわつく教室。
『クイーンの妹が異色の転校生を好敵手と認めた』と、学校中に広まるのはすぐのことだった。