やんきー劇団。
動画。
『キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン』
やっとダルい社会が終わる。
クラスの半分以上は絶対、居眠りしていた。
「弁当、なに入れたっけ?」
眠すぎて忘れてしまった。
「絵美の弁当ちょーだぃ!」
いきなり横からリュックを奪われる。
何事かと見ると、ただのほっくん。
「あー!今、ただのほっくんってガッカリしただろぉ〜!」
ギャハハと八重歯を見せて笑うほっくん。
彼は茶髪でピアスの北斗くん。
私はほっくんと呼んでいる、ヤンキーだ。
ただ同じクラスになって、席も近かったから、なんとなーくで仲良くなったのだ。
ほっくんは喋りやすく、暇つぶしに喋ってるうちに仲良しになっていた。
で、いつの間にか心の中を読み取られるぐらい仲良くなっている。
「ほっくん、読心術じょーずになったね!」
大げさに拍手をして、ついでに茶髪をクシャクシャとなでる。
「えぇっ。否定もしねーの⁉︎」
文句をブーブー言いながら、どこからか出した櫛で髪の毛をとかしはじめる。
「うわ〜、キモい。」
ほっくんからワザとらしく距離をとる。
それをみて、ほっくんは顔を赤くして口を尖らせた。
「ふーんだ!誰のせいだとおもってんだし!絵美ちゃんだよ、絵美ちゃん!」
「はぁ〜⁉︎人のせいにすんな、ナルシストほっくん!」
「んなっ‼︎」
いつもはあまり言い返さないが、今日はテンション高めだからつい、ほっくんをいじってしまった。
ほっくんは見かけがヤンキーなくせに、女の子に口喧嘩で負けるぐらいなヘボだ。
「ほっくんの誕プレはピンクのハートいっぱいな櫛だからね!決まりだもんね!」
すっかりいじけて黙り込んだほっくんを少し可哀想になって、これぐらいにすることにした。
「あーもう、ほっくん!」
私に背中を向けたほっくんの肩を揺さぶる。
でも、無反応。
「ほっくんってばー。ごめんね?私の弁当、欲しいんならちょっとあげる。」
すると、ほっくんがピクリと反応。
さらに私は弁当の内容を説明しはじめる。
「しょーがないなぁ。食ったげるよ、絵美ちゃんのマズそーな弁当…。」
くるっとこっちに向き直る。
本当にほっくんは子供だな。
つい笑いそうになるのをこらえて、弁当を取り出す。
もし笑ったら、ほっくんがまたいじけちゃうから要注意だ。
「うひゃー!弁当、うまそぉ〜!」
ほっくんは手をスリスリし始めた。
目が明らかに輝いている。
「ほっくんは本当に食いしん坊だねぇ。いっぱい食べてよ〜。」
ほっくんに弁当を分けながら、すっかり母親口調になってる。
ほっくんの方もまんざらでもなさそうだ。
自分の弁当をほっくんと半分こし、ほっくんの焼きそばパンを半分もらう。
「では、いただきます。」
「いっただきーーー‼︎」
ほっくんはガツガツと弁当を平らげる。
私はちょびちょび食べる方なので、大抵ほっくんが先に食べ終わって、まだ食事中の私にいろいろ話を聞かせてくれるのだ。
今日もおそらくそのパターン。