俺、兄貴になりました②
「あ、慶!ほら、あの子来てるぞ」
あの子?
駿介が指差したのは女の子達の群れではなく、その少し離れたところにある小さな扉。
「あ…」
そこに立っていたのは、ポニーテールの女の子。
少しオドオドとした様子で中を覗いている。
「かーわいいよなー、あの子。同じ1年の子だろ?誰目当てで来てるんだろうな」
彼女はいつも控えめな場所にいて、絶対に女の子達の集団には入らない。
その様子を毎日見る度、彼女が気になって仕方なくなった。
「一年、そろそろ始めるぞー」
キャプテンの掛け声で練習が始まった。
練習の最初に円陣を組んでからランニングに入る。
列に並ぶ時にチラリと彼女を見た瞬間だった。
「!」
ばちっと目が合って、彼女が恥ずかしそうに下を見る。
ウソ。
マジで?
今、目が合ったよな…?