プロテスト・レコード
プロローグ
真っ赤に燃え盛る炎。
煤を被って黒くなったフローリング。
そこに横たわる2つの………
「君はもう一人だね。」
顔をあげると背の高い青年が立っていた。
悲惨な火事現場に不釣り合いな笑顔を浮かべていた。
「………だよ」
「?」
「何でこんなことするんだよ!」
ダメだ。涙が止まらない。
「昨日まであったはずのものが突然なくなってしまう。」
青年は語りかけてきた。
「明日がある保証もない。10歳の君にはわからないかもだけどね。」
炎が迫ってくる。熱い。
「なにも信用できないこんな世界を……」
声がとぎれる。彼の顔を見ようとしたとき、彼に頭を押さえつけられた。
僕の頭には帽子がのせられた。乗せられた刹那、炎に僕は包まれた。
「ごめんねきみをまもれなくて。」
青年の声が遠くなっていくなかで青年は小さく呟いた。

「残酷でなにも信用できなくても、世界を愛してくれ。」

彼の頬に涙が伝うのを炎に巻き込まれながら見た。
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