君がいるだけで 〜時をかける恋物語〜
プロローグ
そう、それは本当に、曖昧なものだった。
手を伸ばさなければ、掴めずに変われないままだったかもしれない。たとえ恐怖に襲われても、頑張って前に進まなきゃ辿り着けないような、手探りの恋だった。
大事なものに、気づくのに遅れて。
失った気持ちを、思い出すのが怖くて。
それでも、私は恋をした。
逃げてばっかの私が出会った、太陽みたいな恋。その光に、私は吸い込まれていったんだと思う。
苦しくて、切なくて、泣き出しそうで。
でも暖かくて、初めて自分と向き合えた。自分を理解できるキッカケになってくれた恋だった。真っ直ぐな心で、私の心を照らして、包み込んでくれた。だからこそ私も、強くなろうと思えたんだ。
全ては君と、巡り会えたから。
運命が、止まったはずの時間が、動き出したんだ。
忘れられない、あの春にーー