隣のあなた。
「夜の生活なのに不思議だったんだ」
「何度か挨拶する程度で……けど、ある日どこで働いてるか聞かれて、答えたら店に客として来たんだぜ」
「爺さんと秘書みたいな奴と。場違いだろって思ったけど、指名はしてくれるし、高い酒入れるし…かなり焦ったわ」
「で、何度か来るようになった頃、この部屋の話をしてきたんだ……この部屋は大切な人に渡す為に買ったって……だから愛人かと思った」
「多分……いつか住む紗織に危険がないように俺を見定めたんじゃねぇか?」
そうかもしれない……
けど、そこまで私の事を…。
『お爺様が居なかったら…私たちは一生出会えなかったかもしれないね』
私がクスクス笑うと
敦司さんは真剣な顔で
「いや、絶対会ってた……あれは、間違いなく運命だ。俺はあの日からずっと…」
そう、私達の出会いは
マンションじゃなく、あの雨の日……。