恋愛ドクター“KJ”
 アスカと一也。二人が見つめる相手はKJだった。
 「ははは。それか。そっちはもっと簡単なんだ」

 声を出して笑ったKJは、三ツ矢サイダーを手にすると、ゆっくりとそれを口にした。
 「この甘さはいいね。頭もジンジン働くって感じがするから」
 そう言ったかと思うと、

 「どう説明すれば二人に分りやすいかなあ‥‥」
 と、続けた。視線は、はるか遠くを向いている。

 「うん、そうだ。修学旅行の行き先を、北海道にするか、それとも沖縄にするかって事で、中学生のときにホームルームで決めたよね。あれ、おぼえてる?」
 そうKJが問いかけると。
 「俺はKJと同じクラスだったから覚えてるけど、アスカは外部生だから知らないよ」
 一也が答えた。

 “外部生”というのは、高校から入学した生徒を意味する。中・高一貫の私立校なので、持ち上がりで、そのまま中学から高校へと進学した生徒は“内部生”と呼ばれていた。

 「ああ、そうか。でもいいや。知らなくても説明には困らないから」
 そういったKJは、アスカに視線を戻すと、多数決の秘密を説明し始めた。
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