恋愛ドクター“KJ”
 「え~っ! なんでよっ!!」
 これにはアスカが噛み付いた。

 「簡単な理由だよ。
 北海道でも沖縄でも、どっちでもいいって感じている20人は、積極的には自分の意思っていうか、考えは示さないんだ。積極的じゃない。
 だから、その20人のうち、過半数は後で手を挙げるんだよ。仕方なしに挙げるんだ。
 だから、多数決で何かを決めるとき、どっちでもいいやって考えている人が全体の三分の一でもいたら、後攻が勝つんだよ。
 多数決って、後攻の勝率は70%以上なんだ」

 このKJの説明には驚かされた。
 これまで、多数決で、先攻と後攻のどちらの勝率が高いかなど考えたこともないアスカと一也だ。
 が、そういわれれば、そんな気がした。

 「だから、討論会なんて、黙ってみていれば70%以上は後攻が勝つんだ。
 北海道も沖縄も、どちらも楽しそうだっていう雰囲気、意見を出しておけば、まず間違いなく後攻が勝つね」

 黙ってKJの話を聞いていた二人だが、突然、一也が叫んだ。
 「でも、KJは、100%の確率で多数決をコントロールできるって言ったろ。
 今の説明だと100%じゃないんじゃないか‥‥」

 そう反論されたKJは、かるく微笑むと、一也に視線を向けて答えた。
 「うん。その方法だと100%のコントロールはムリだね。
 でも、今の話を発展させると、100%コントロールする方法が見つかるんだ。
 自分の好きなものに、多数決の結果を誘導できる方法だよ」

 自信ありげに答えたKJは、そのまま説明を続けた。
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