恋愛ドクター“KJ”
 「一也はよく覚えているね。確かにそうだったよ。
 さっき、多数決を決める前に、3つのグループに分かれるって話したよね。
 北海道と沖縄と、どっちでもいいっていう3つのグループだよ。
 だから、どっちでもいいっていうグループを動かせれば、結果を動かすことになるんだ。
 北海道って決めているグループと沖縄って決めているグループは、動かせないんだ。どんなに説明しても動かせない」
 KJは、多数決を考えるとき、それは3つのグループに分けられるという説明をここでもした。

 「それは聞いたけど、でも、100%の確率では結果は動かせないだろ。
 70%以上っていうなら、何となく思うけど」
 一也だった。

 「そう。何も発言しないでホームルームを見ていれば、後攻が70%の確率で勝つんだ。だから、自分の望む結果になるように発言すればいいんだよ」
 そういったKJは、すこしの間をおいて説明を続けた。

 「日本人の討論会ってね、本当の意味での討論会じゃないんだ。論理的に意見をぶつけ合うってことができないんだ。だって、正しい討論会の方法なんて、学校でも家庭でも教えてもらってないからね。
 だから、日本人の考える討論会って『品のある罵り合い』でしかないんだ。
 いろいろな意見が出ても、その意見が合理的かどうか、ムダやムリはあるのか、そういう捕らえ方をしないし、できないんだ。
 自分の意見も他人の意見も、『好きか嫌いか』で分類しているんだよ。
 だから、敵の意見の方が優れていても、感情が優先して、自説を押し通そうとするんだ。
 皆のためになる意見かどうかなんて、誰も考えないよ。好きか嫌いかなんだよ」
 KJは、そこまで説明を続けたところで、アスカと一也の顔を見た。

 二人は、何となく理解したような‥‥というか、いや、だからどうなんだという顔をしていた。
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