恋愛ドクター“KJ”
飯能駅で電車に乗ったKJ、アスカ、一也の3人は所沢駅で降りた。駅に隣接するファミリーレストランのカーサに入る。

「先に来ているはずだけど‥‥」
そういいながらキョロキョロと店内を見渡すアスカの目に、手を振って合図を送るみどりの姿が映った。

実は、みんなして一緒に行動しなかったのはKJの作戦の一つで、3人が到着する少し前に、みどりと祐二の2人をレストランで待たせるよう仕向けていたのだ。
その際、みどりと祐二とは、テーブルを挟んで座って待っているよう、KJからの指示があった。

どうせ2人だけを先に行かせるなら、並んで座らせておいた方が良いのでは‥‥という意見がアスカから出たが、KJはそれを否定した。
「祐二の気持ちを探るには、みどりとは並ばせずに、向かい合わせた方がいいんだ」
そういったKJは、みどりに対し、
「ドリンクバーだけをオーダーして、それ以外は何も頼まないでほしいんだ。
それから、自然な感じで普段と変わらない話をしていてくれればいいから」
と、アドバイスをしていた。

そんな2人の待っているテーブルに、KJ、アスカ、一也が加わった。

後から3人が加わると伝えてあったのか、2人が座っていたテーブルは4~5人用のサイズだった。
「遅れてごめんね。
一也がチョッと用事ができちゃって‥‥」
アスカが、打ち合わせ通りの言い訳をした。
「ううん。私たちも、さっき来たばかりだから」
これも、打ち合わせ通りにみどりが答えた。

5人は、それぞれを簡単に紹介しあったところで座った。
みどりの隣にはアスカが着き、祐二の隣には一也が腰を掛けた。
KJは“誕生日席”だ。

テーブルの上には、みどりと祐二がオーダーし、飲みかけになっているドリンクバーのグラス2個が見えた。
それを確認したKJは、なぜかかすかに微笑んだ。


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