小指を絡めて明日を望む
「私、そろそろ帰る」
「ん」
「……なに、小指何か出して」
「指切り」
「は?」
指切りってあれか。嘘ついたらはりせんぼん、みたいな。って、「なんで」しなきゃならないのか。
悠哉の、男らしい手でも小指だけがぴんとのびている。何だか変だ。指切りするような歳でもない。むしろ、と私はわずかに回りを気にした。この歳で指切りなんて。いや、今なんて小学生でもしない。
戸惑う私をよそに、悠哉は「約束」と。
「美穂乃は明日も生きますっていう約束をしろ」
な、にそれ。
しってるの?と聞きたくなった。
私が、世界とおさらばする予定だって。
まさか。いつもと変わらないように話していたはずだ。そう。
「明日、話題のグレープ屋につれてってやるから」
「……」
私は、わからない。
けれど。
私に明日はありません。
そう、決めていたんだけどな…。
「仕方ないな。悠哉の奢りだからね」
「いつもだろーがそれ」
私は、自分の小指を絡める。
《小指を絡めて明日を望む》
明日、私は彼の約束を守るのだろうか―――――。
了
15/4/26