The past kept secret~解き放たれる現実~
 友里香が目を覚まし、最初に目に入った光景は、何処か屋敷のロビーみたいなとこだった。左右には階段があり、上の階に繋がっている。真正面にはドアがある。背後にはよくわからない人物の銅像があった。友里香は屋敷に来た覚えなど全くないので、戸惑った。
 「……何で、屋敷にいるの?こんなところ、わたしは知らない……」
 「いや、知っているはずさ」
 「……!!」
 突然割り込んできた謎の声に対し、友里香は声の正体を確かめようと、周囲を見回す。友里香に対して左の方向――つまり、階段がある方向に人影は見えた。
 「……誰?」
 「ボクのことを誰?と尋ねるとは、報告通りだね。忘れきってしまっているようだ」
 友里香は、人影が言う言葉に、様々な疑問が浮かんだ。
 報告通り。
 忘れきってしまっている。
 この2つのキーワードだ。
 報告通り、となれば、その人影は団体活動していることがわかる。単独ならば「報告」という言葉とは無縁のはずだからだ。そうなれば、人影には仲間がいる。
 もう1つ。そちらのほうが、友里香には引っ掛かった。
 忘れきってしまっている。
 何を?と友里香は最初に思った。だが、人影の言葉を思い返せば、「ボクのことを誰?と尋ねるとは報告通り」とは、友里香は過去に人影と接触したことがある、ということになる。それとも、友里香に「こいつとは接触したことがある」と思わせ、混乱させようとしている、という罠なのかもしれない。
 友里香は言葉を整理して、言った。
 「過去にわたしは、あなたに接触したことがあるの?」
 「なかなか鋭いね。確かに接触したことがある、と言えば正解だよ。覚えてないか、やっぱり。だってレネスト様の言う通り。何もかもさっぱり忘れちゃってる」
 更に気になるキーワードが浮かぶ。
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