The past kept secret~解き放たれる現実~
 「これ、紅茶。味に合わなかったらすまない」
 「いや、ありがとうございます」
 友里香は男の人から紅茶が入ったカップを受け取った。そしてカップにそのまま口をつけ、紅茶を飲み干していく。
 「……おいしい、ですね」
 「口に合って何よりだ。そう言ってもらえると嬉しい」
 「…………?」
 友里香は何かが、脳裏に引っ掛かっていた。
 

 「どうしてお母さんに会わせてくれないんですかぁっ!?」
 「それだけは……おれでも叶えさせてあげることはできません」
 「どうしてなんですかぁっ!?」
 「……それは、言えません」
 「もう嫌っ!わたしは嫌なのっ!」

 
 「…………!!」
 脳裏に浮かんだのは、先程のドレスを着用した少女と、白いコート――丁度、友里香の眼前にいる男が着用しているロングコートと同じコートを着用する少年の会話が聞こえた。
 「…………何、これ?」 
 友里香は頭を抱えた。
 「何なのよ。どうして……あの子が出てくるのよ?誰なのよ、あなたは。わたしは関係ないのに、どうしてあなたが出てくるのよ……?」
 何度も浮かぶ、関係のない幼い少女のすがた。
 「どうしたんだ?」
 「ちょっと……調子が悪くて」
 「その脳裏に、おれのすがたがあったか?」
 「ない……ですけど」
 「そうか。それでも構わないが」
 それは先程も言わなかっただろうか?友里香は疑問に思いつつ、空になったカップを男の人に渡した。
 「あなたは、わたしのことを知っているんですか?」
 友里香はとりあえず、聞いてみる。
 「知っていますよ、友里香さん。おれの友人に友里香さんのことを知っている人がいますので」
 「あ、そうですか」
 それから友里香は、男と会話を続けた。
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