The past kept secret~解き放たれる現実~
 しかし、その考えで納得できないところもある。例えば、操られているとしても、揺すってしまえば元に戻る。操られている、というより、ぼーとしていた、という表現が正しい。操られていたのなら、揺すっただけでは解除されるわけがない。それか、もう用済みになったか―――。
 友里香は一生懸命考えたが、答えを導きだすことはできなかった。
 「もういいっ!!今はミッションに集中するっ!!」
 考えれば考えるほど、何がなんだかわからなくなってきたので、友里香はとりあえず考えることを中止した。
 友里香は思いっきり叫んだので、コーヒーを飲んでいた佑介は吹き出しそうになっていた。
 「いきなり叫ぶなって!」
 「……ご、ごめん」
 「そういえばさ、今日のミッションはおれたちだけなのか?」
 「紙に記されているんじゃないの?えーと……人数は記されてないのね。でも、ここに収集されているのはわたしだけのようだし、時間になったらアジトに行きましょう」
 「そうだな。今頃はおれたち以外の人は、他のミッションをやってるんだな」
 「そうじゃないの?だってここにいないんだし」
 「ま、そうだろうな」
 コーヒーを啜(すす)りつつ、佑介と友里香は会話していた。
 「時間まであと少しよ?そんなに飲んでいいの?途中でトイレなんか行かせないわよ?」
 「そんなの分かってるって。なんで大事なミッション中にトイレなんか行く暇があるんだって」
 「でもあんまり飲まないでよね。わたしだって我慢しているんだし」
 「飲めばいいだろ。金なんて勝手に降ろされるんだし」
 「いや……今はちょっと……」
 友里香は集中していた。
 ミッションを始める前に、冷静を保つために。周囲の状況が把握できなければ、ミッションをクリアさせることはできないからだ。そのために、冷静さを維持するために、集中していた。
 そして酒場の壁掛け時計の0の文字が、針と重なって―――。
 「行きましょう」
 友里香は覚悟を決めた。
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