The past kept secret~解き放たれる現実~
 「やったわ。ミッション成功よ!」
 ミスト街道の地下に通じる階段前で、友里香はミッションが成功できたことを素直に喜んでいた。
 「よし、あとは酒場に戻ってのんびりとレポートでも書いて報告するだけだわ。はぁ~、やっと我慢しなくて飲めるわ」
 「じゃ、さっさと帰ろうぜ」
 「わかった」
 今は深夜なので、当然ながら空は真っ暗。視界も見えない。しかし、友里香たちには携帯式のライトを所持しているため、多少の暗闇の中でも視界は明るい。
 ライトの電源を点け、2人はレシノア村へ帰ろうとした。
 その時だった。
 「…………うっ」
 前を歩いていた友里香は、後ろから誰かの呻き声が聞こえ、足を止めた。
 「……え?」
 友里香は後方を振り返った。そこには、視界が暗くてよく見えないが、倒れている佑介がいた。
 「……佑介っ!!」
 友里香はすぐに佑介のもとへ走っていった。
 「佑介!どうしたのっ!」
 うつ伏せに倒れているため、表情の確認ができない。友里香は身体ごと動かし、佑介の表情を確認した。
 「…………!!」
 友里香の視界にいた佑介は、ミッションに行く前、酒場で見た佑介だった。
 「……また、違う佑介に……」
 そこにいる佑介は、友里香の知っている佑介ではなかった。瞳に光が無くて、表情は無い。誰かに操られているかのような、そんな感じだった。
 「どうしてっ!?」
 それなのに、佑介は「知らない」と答えたことを、友里香は思い出していた。この状態に陥っている時、本物の佑介は何処にいるのか?本当に、誰かに操られてしまったのか。
 そんな時、新たなことがいくつかわかった。
 佑介は「用済み」にはなっていないこと。そして、呻き声を上げたこと。
 用済みになってしまえば、通常はこれ以上、操られるわけがないのだ。操る理由すらないからだ。なのに、佑介は再び同じ状態に陥った。これは、いったい何を意味するのだろう?
 そして、呻き声を上げたこと。酒場で初めて見た「もう1人の佑介」は、呻き声を上げなかった。それは単に友里香が聞いていなかっただけなのかもしれないが、それにしても、何かに突然掛けられた感じもした。
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