【完】あんな美容師に騙されない!
なんだ、この笑顔……
そんな朝比奈の笑顔、初めて見たわ。
土曜日って、プライベートで会おうということか。
それって、朝比奈と私だけでお出かけということ。
何の用で土曜日に……仕事の話かな?
いや、よりによってこいつが仕事の話をするわけがない。
「……土曜日……ちょっと、待って。えーとね」
私は疑いながらもただカバンを開けて手帳を開いた。
すると、今週の土曜日にはなにも予定は入ってなかった。
「……予定はないけど……朝比奈、なんで私を誘うの?」
「……なんで、わかんないんですか?池脇先生」
朝比奈はため息してから私を呆れたように見てきた。
私は手帳を閉じてカバンにしまい、首を傾げていた。
「なにが?」
「僕って、一応男ですよ? 池脇先生。僕は男としてカウントされてないんですか」
私は朝比奈の言葉に戸惑った。
朝比奈は同期で弟的存在。
だが、男としては見ていなかったかもしれない。