【完】あんな美容師に騙されない!
望は見ていた雑誌を置いていきなりあっと言って思い出したかのように私に言った。
「高木旭って噂あるらしくてね。
たまたまベニの店を通った時に髪切り終わったお客が言ってたのよ。
噂では、女性の髪にしか興味がないって」
「ふーん噂が本当か知らないけどあんな美容師、女性の髪しか興味ないなんて変人じゃない?」
望は、なぜか慌てていた。
波、後ろ見てと私に言ってきた。
「なに?」
私は後ろを振り返ると、高木旭がいた。
「俺のことですよね」
「はい?」
望は、こちらを見て頑張れと口パクで言っている。
茶髪の店員は笑っていた。
「俺の話してましたよね」
鏡越しで高木旭は私を見てくる。
「い、いえ。違いますよ」
私は下を向いて高木旭に言った。
高木旭は一旦黙り、鏡越しで私に笑顔をしてから私の耳元に近づき、こう言った。
「あなたに、後で渡したいものがあります」
「は、はい」
私は耳を赤らませた。
「では、髪を洗うのでこちらに来て下さい」
私は、シャンプー台に行った。
椅子に座り目にタオルがしかれて、何も見えなくなった。
すると、高木旭が「髪、濡らしていきますね」と言ってきた。
私は返事をしないまま高木旭に私の髪を任せた。
私の髪を濡らした後は
「シャンプーをしていきますね」と高木旭は言った。
私の髪をゴシゴシしていった。
「かゆいところありますか」
と高木旭は聞いてきた。
私は、いつも思う。
かゆいところありますかと聞かれたら
言えるはずがない。
ここかゆいですっと具体的に言われても
どう説明すればよいか分からない。
だが、高木旭は気持ちいい指遣いで私の髪をマッサージしている。
私は、眠気が襲いつつも我慢していた。
高木旭の手は、顔に似合わない程ゴットハンドだった。
高木旭は、「リンスして行きます」と言ってきた。
私は返事をしないで高木旭のなめらかな指を自分の頭で感じていた。
私の頭は、高木旭のなめらかな指でいっぱいになった。
私の髪は全部洗い終えて、元の場所へと戻った。
「どうぞ」