【完】あんな美容師に騙されない!
「……なんで、笑ってんだよ」
俺はふてくされた。
「違うよ。ただ面白いだけ」
旭は、いひひと女子みたいな笑い方をしていた。ちょっときもい。
ベニはただ微笑んで、俺を見ていた。
「笑うなんて失礼な」
俺はそう言ったが、その好意がただ嬉しいような嬉しくないような歯がゆい感情であった。
「はいはい、分かってるから。翔太がそんなこと言うなんてな。明るい翔太がね、まさかそんなこと言うと思わなかったから」
ただ素直に旭は笑っていた。
昔は笑わなかったのに、ベニと会ってから別人のように変わった。
他人を思いやる心があいつにもあったとのは昔から知っていた。
だが、他人に感情を外に出すことはなかった。
目や仕草をじっくり観察して俺だけ分かっていた。
しかしベニと話すようになると、男として一人の人間として自分の個性をどう思われているか客観視したのだろう。
そして、旭は他人と関わることの大切さが分かったのだと思う。
これは俺の解釈だけど。
旭は、本当に羨ましい奴だ。
本当に。