【完】あんな美容師に騙されない!
「ベニの名前だからって、誰しも吉岡ベニのことを見ている訳ではないだろう」
旭は、男が恥ずかくて言えないことを言ってしまう。
こっちが恥ずかしい。
ベニはえ? と呟き、顔が赤くなっていた。
こいつら長いあいだ付き合ってるのに。
こんな、純愛なドラマを見ているようだわ。
「……はあ」
俺は、二人を見て諦めたようにため息をついた。
「ゴメン、翔太」
旭は我を返ったのか俺を見て謝る理由はそんなにないのに謝ってきた。
この二人は、もう俺の入るすきはないな。
「大丈夫ですよー、旭さんー」
おどけたように俺は言った。
「どうしたんだ。翔太。……まあ、言いや、じゃあ、美容院ベニに決定! 」
旭とベニはパチパチと両手で拍手をしていた。
俺もそれに便乗して拍手をした。
すると、ベニは
「旭。美容院べ二を愛してね。私がいなくなっても」
ベニはなぜその時いなくなるという単語を使ったのか分からない。
でも、ベニは私がいなくなってもやっていてよ、美容院ベニはと言いたかったのかもしれない。