【完】あんな美容師に騙されない!
美容院ベニが出来るまでのことを塞ぎ込んで部屋から出ない旭と俺はドアによりかかりながら話しあった。
「……旭。思い出した? ベニがなんで出来たのか」
俺は一言も発しない旭に美容院ベニが出来た経緯を話終えて言った。
「俺さ、あの時、ベニがいた最後の一言が忘れられないんだよ。私がいなくなっても美容院ベニは愛してねって」
旭は黙ったままで返事はない。
「その時の言葉通り、ベニは今旭に美容院ベニを守ってほしいと思ってるはずだよ」
ジッとしているのか旭の部屋からは物音がしない。
俺は後ろを振り返り、ドアの向こうにいる旭に伝えた。
「……女の髪だけ愛して、私も愛してねってベニ言ってくれただろ。それはお前自身、ベニが好きだから美容院ベニを承諾したんだろう。その他に何がある。だけど女の髪だけ愛してっていうのは、髪を大事に切ってあげてとベニは言ってた。覚えてるか?ベニは、あの美容院を大切にして欲しかったから……だから……ベニも自分のことを忘れないでと思ってたんじゃないのかよ。一緒にいるのに、不安だったんじゃないのか!」
俺は、後半から何を言ったか記憶になかった。
それくらい、勢いで旭に罵倒した。