【完】あんな美容師に騙されない!
朝目が覚めると外で小鳥が鳴いていた。
チュンチュン チュンチュン
世の中は平和なのだ。
誰かが悩みを抱えていても、明日がやってくる。
戦いが起こる現代ではない。
だが、命が粗末にならなくなった時代。
身体的、精神的にも昔よりよくなっているが、精神状態は孤立になっている気がする。
友人や仕事の仲間がいても、何か壁を感じて幼い頃に無邪気に遊んでいた感情が湧いてこないのだ。
生きている人間は私であるのに私じゃなくなっていくと思う。
そんなことを考えながら私は布団から起きあがった。
昨日のことがあって眠れなかった。
私が私なのに、私であるのかと疑問に思えた。
「波、元気ないね。どうしたの」
私は仕事に行き、デスクワークをしていると望が話しかけてきた。
「……いや、別に」
私は素っ気なく返事をした。
「……もしかして、高木さんに会った?」