【完】あんな美容師に騙されない!
朝比奈、初めて私の名前呼んだ。
いつも池脇先生なのに…
「……それがなにか?あなたもですよね?」
数秒黙り込み、変人美容師は意地悪そうに微笑んでいた。
私はその言葉にえ? と聞き返したくなった。
今なんて言いました?
「やっぱり居た。波が大切な人だと思っている人」
朝比奈はそう言って、悲しそうに微笑んでいた。
「朝比奈?」
「波、俺お前のことが好きだ」
変人美容師がいることなど関係なしに朝比奈は私の方を向いて言った。
朝比奈が私を好き?
でも朝比奈は真剣な眼差しで私を見てきた。
「え?」
「こんな奴を好きなのは分かってる。でもはっきり言って、波のこと好きなのに正直に気持ちを伝えないこいつといるのは僕としてはやだ」
朝比奈は拳を握りしめて涙を流しそうな顔を我慢しながら私に言っていた。
「朝比奈…」
私は朝比奈を見た。
それはいつもよりも男らしい朝比奈だった。
まあ、男らしいとこあるちゃあるけどいつも頼りないから。
そして変人美容師の顔を見ると、ただ私を見ていた。