獅子王とあやめ姫
 「え、はい…。」

 戸惑いながら返事をするイーリス。

 傷だらけの腫れ上がった顔を直視されるのがいたたまれず、顔を若干うつ向かせながらも、こっそり朝からいきなり訪ねてきた来客を観察した。 

 明るい栗色の巻き髪に、くるくるとよく動く橙色の大きな目。

 シワ一つない上等な衣をまとい、肌や髪の艶もよい。

 昨日のパピアの話をふと思い出した。

 __妹のイゼルベラ姫もとってもお美しくて。

 「どうしたの?大丈夫よ、顔を上げて。」

 「あの、もしかしてあなたは……。」

 「イゼルベラ様。困ります、勝手なことをなさっては。」

 扉を叩くこともせずにロファーロが入ってくる。

その口調は淡々としていて、この部屋に勝手に入ることにもなんの抵抗もないようだ。

 「扉を叩くことくらいして欲しかったです。」
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