獅子王とあやめ姫
それに権力しか眼中に無い大人達が支配する、この汚れた国が大嫌いだった。

その国の汚れから生まれたようなあの娘にはより嫌悪感を抱かずにはいられなかったのだ。

無実の罪で拷問に掛けられ、腫れ上がった顔を曇らせていたイーリスのおどおどした態度が脳裏に浮かび、ロファーロは軽く舌打ちをした。

___なぜあの少女はあんなに気に触るんだ……。

 母親を目の前で殺され相当心にこたえているようだが、そんなことは知ったことではない。

ロファーロは、ため息をついた。

「あら、ロファーロ様じゃない!」

「トリーフィアさん。」

恰幅の良いこの中年女性は、下級書官の頃から目を掛けてくれていた王女の教育係だ。
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