獅子王とあやめ姫
男と刃を合わせているのは、小柄な茶髪の人物。

「困りますね。姫君のお誘いとは言え勝手に出歩かれ、ては...!」

今度の命の恩人はロファーロだった。


* * *


「すごい......。」

ロファーロの戦いっぷりに、素人ながらイーリスは思わず感嘆の声を漏らしていた。

「当たり前です。」

淡々と告げると、ロファーロは治安維持兵を呼ぶよう店主に言いつけた。

「それともう一つ。この金は店を汚した分の謝罪の気持ちだ。これを受け取る代わりに、わたし達が来たことは秘密にしてくれ。ただ強盗に入られ、用心棒が助けたことにするんだ。」

いつのまに用意したのか、口止め料も含んでいるのであろう大金の入った袋を、恐怖が拭いきれていない店主に渡す。

「さて......。」

そしてひとまず安心している少女2人に向き直る。

(あれ......怒ってないのかな......。)

怒気を含んでいないその目を見てイーリスは不思議に思いつつ胸をなで下ろそうとしたが、次の瞬間横へ吹き飛んだ。

「...!?」
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